68 螢の鎌田川

「螢飛びます鎌田の水に
   泣かぬあはれがあの身をこがす」
青田の原をゆるやかに行くさゝやかな流れ!
この橋の下より生れ出る美しき光の數々、晝は川邊の草の雫を吸つてまどらかな夢をむすび、夕となれば源平に別れて[# ママ]葛藤し合ふといふ。
老も若きも手に手をとつて、こゝに夏の暑さを忘れるのである。
この螢の幼虫は本縣特有の地方病、日本住血吸虫を捕食することにより、本病撲滅上重要視され捕獲を禁じられてゐる。文部省は天然※[#「ごんべん+巳」、読みは「き」]念物として、この源氏螢を指定し、長くこの自然の美を保存すべく努めてゐる。

(立川武男)


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