33 舞鶴公園所見

  春は舞鶴お城のさくらよ
     戀のベ[# 原本では「ペ」となっている]ンチの花吹雪
   泣いて別れりや山さへ曇る
      やるせないぞへ雪の富士
     戀し甲府のあの日の夢よ、あの夢よ
落葉の吹き寄せられた日だまりに殘つてゐる西日をなつかしむやうに見守つてゐた黒い人影、追々にうすれゆくあたりの光線のうすら寒さを覺えて、傍のベ[# 原本では「ペ」となっている]ンチに腰を下した。暗い洋燈の光が闇にぼやけて茶色の輪を畫いてゐる。
飄々と木枯しが吹いて、今に時雨でも來そうな空模樣である。
噴水の水がさつと風に散る……

(的場信輝)


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