15 甲電エレヴエーシヨン
山梨は水電の國だ。三千米前後の山々から流れ落つる水の落差を利用して、到る所に水力發電所が設けられてゐる。縣下五十數個所の總出力は二十三萬キロワツト、五本の送電系により京濱に送られてゐるが、縣内で消費される電量は極めて微々たるものである。 版畫は紅梅町の甲府電力會社で單なる發電會社でなく、これに伴ふ各種の電氣事業の一切を經營し、盆地に於ける電氣王國の觀を呈してゐる。目下市營の交渉が進行中である。 見よ、明るいエレクトリカルな建物を! つゝましやかに歩いてゐる麗人の肩には、白いシヨールが光つてゐる。
(渡邊正道)