伊東けい子さんの作品 広川青五(東京学芸大学名誉教授・日展評議員)

 帝展には、工芸が1927年(昭和2年)から参入したが、より一層の作品としての向上をめざし、1962年(昭和37年)日本現代工芸美術展が開かれた。
 この頃、伊東さんが練馬公民館染色サークル「青の会」にみえるようになり、やがて専門の染織作家東京会に入会され、研究会にも参加、積極的に作品内容の充実に努められた。上記日本現代工芸美術展にも数回入選、会友にも推挙された。
 伊東さんの作品は、素直でさわやか、明快で動きのある構成で、色彩はあくまでも透明で、鮮やかなのが特長である。
 例えば、長靴シリーズでも、木琴の音を聞くような快よいリズムを響かせる構成で、高原シリーズでも、果実、連山、雲、木などをモチーフに時間も感じさせる組み合せである。
 また、花や果物の作品なども、つぼみ、開いた花、散りはじめた花をうまく組合せるとか、蔭と日向をオーバーラップさせ、詩情を感じさせながら、立体的表現をするなど、その造形力は、目をみはるものがある。
 染色は、私が開発した新技法の一品制作(プロトタイプ)の捺染で、平面は、シルクスクリーンを使い、細い線は、のり筒を使って描き、染色している。
 ろうけち染と違い、公害になるトリクロエチレンや火気厳禁のガソリン不要。環境にやさしい染め方である。  多くの皆様のご厚意で、故郷に錦を飾るような展覧会を開いていただき、一番喜んでいるのは、作者ご本人であろう。

(2001.6)